逆浸透膜以外でも放射性物質が除去できると宣伝している浄水器もありますが?

逆浸透膜式の浄水器以外で放射性物質が除去可能とされている場合、これには3つ考えられます。

1.水に溶ける前の粒子の大きな放射性物質なら除去できる。
2.浄水器のフィルターにイオン交換樹脂が使用されていて短期間なら吸着出来る。
3.蒸留式の浄水器なら除去可能

1.について、浄水器の性能を誤魔化すトリックがあります。

塩を水に溶かす様子を思い浮かべて下さい、溶かす前の粒状の塩は小さくても指で摘む事が出来る大きさです。でも水に溶けてしまうと目で見ることすら出来ない小さなナトリウムイオンと塩素イオンになってしまいます。金属系の物質も水に溶けるとイオンとなります。これは原子1個と同じ大きさですから通常の自然界では一番小さな状態ですから目で見ることも出来ません。

溶ける前の塩の様に粒子の大きな状態の放射性物質なら捕まえられても、イオン化した放射性物質は活性炭や精密濾過膜(家庭用浄水器に使用される中空糸膜)では、100%通過してしまいます。

つまり同じ放射性物質でも原発から地上に降り注いてくる塵状の大きな粒子の状態と、河川に落ちて溶けて小さくなった状態では、大きさに格段の違いが有るので、「浄水器で放射性物質が除去出来ました」だけでは、水に溶解した放射性物質も除去出来るとはならない訳です。

大きな粒子の放射性物質なら浄水場でも取り除けるはず

2011年当時、最初に問題となった、東京都の金町浄水場では高度浄水処理で活性炭濾過を行っていますし、当然、擬集沈殿も行っています(この沈殿した汚泥の放射性物質がまた問題となってしまった訳ですが)。この様にまるで浄水器の様な行程を浄水場でも行っているので、大きな粒子のままの不純物が水道管まで流出してしまう可能性は極めて低くなります。

水道水まで残留して問題となっているのは水に溶けて小さくなった放射性物質です、これは水に溶けた塩を回収する様な作業になります、活性炭や精密濾過膜の浄水器で水に溶けてイオン化した放射性物質が除去出来るならば、そもそも水道水に残留して問題となる事もありません、ましてや200ベクレルを超える高濃度なんて。

イオンの電荷を利用して分離除去を行う逆浸透膜式の浄水器

逆浸透膜浄水器はイオン化した物質が持つ+?の電荷に水分子が取り付き(水和)、不純物を取り囲む事で不純物+水分子と構成半径を大きくして不純物イオンを分離して行きます。水に溶ける物質は+又は-に電荷を持ちますので水に溶けやすい物質は逆浸透膜浄水器にとって除去しやすいのが特徴です。

2.について、イオン交換樹脂は吸着容量に問題有り

イオン交換樹脂はビーズ状の樹脂表面へ両面テープの様に水中のイオンを吸着します、イオン交換樹脂の表面が不純物で埋まってしまうと吸着する場所が無くなり、フィルターの寿命となります。放射性物質だけを選択的に吸着する事は不可能ですから水道水中の全ての不純物イオンに対して吸着を行うので、1年間使用するフィルターであれば相当な量のイオン交換樹脂が必要になり、とても片手で持てるよう大きさのフィルターにはなりません。

イオン交換樹脂がフレッシュな状態なら除去出来ますが、長くは持ちません

もし、活性炭を主体とした浄水器へイオン交換樹脂を添加すれば浄水器の初期性能を高める事は出来ますが、これは消費者の方を欺く行為です。コンパクトな浄水器では1週間位でイオン交換樹脂の性能は極端に落ちてしまうでしょう。耐用期間が1年間のフィルターであれば1年経過後にも使用開始時と同様の性能を維持していなければなりません。

3.について、蒸留式の浄水器も放射性物質を除去できますが欠点も。

蒸留式の浄水器も純水を造る浄水器ですから、水に溶解した放射性物質を除去する事が可能です、また水を沸騰させて蒸気にした水分子を集めるので、フィルターを使用しない構造なので、フィルターの使用期限等を考慮する必要が無いのも利点です。
除去性能には優れていますが、造水速度が遅いのが欠点となります、家庭用の蒸留水器ですと1㍑の浄水を造るのに1時間位要するタイプが殆どで浄水運転中は加熱し続ける事になりますので、エネルギーコストも非常に大きくなります。

逆浸透膜浄水器でも電動増圧ポンプで電気を使いますが、その消費電力は小さく30W弱です、10㍑の浄水を約1時間15分程で造りますから、蒸留式に比較すると非常に小さなエネルギーで浄水を造る事が出来ます。

浄水器/アクアカルテック