浄水器の活性炭フィルター
活性炭は浄水器だけでなく消臭材など幅広い用途に使われています。逆浸透膜式の浄水器でも前処理フィルターと後処理フィルターに必ず活性炭が使用されています。
前処理のカーボンフィルターは水道水の遊離残留塩素を処理するため、「おいおい、逆浸透膜で塩素くらいとれないのか?」と言われそうですが、逆浸透膜を構成するポリアミド樹脂は遊離残留塩素に弱い性質を持ちます。前処理フィルターの活性炭で遊離残留塩素を処理出来なくなると、膜表面を少しづつ溶かして除去率を短期間で落としてしまいます。
ですから逆浸透膜浄水器のプレカーボンフィルターは非常に重要な役割を持っているのです。
ところで皆さんは活性炭が塩素を吸着除去していると思っていますか?実は活性炭は塩素を吸着出来ません。あたかも吸着していたものが徐々に吸着出来なくなって行く様な劣化をするので、吸着しているような説明をしますが、実際には化学反応です。ちなみにフィルターが劣化して役目をなさなくなることを破過=ブレイクと言います。
活性炭は塩素を吸着除去していません。遊離残留塩素と活性炭の化学反応で電子のやり取りを行い、刺激性のある遊離残留塩素から無害な塩素イオンに改質しているのです。一般的な浄水器の場合、塩素イオンはそのまま浄水に残ります、但し遊離残留塩素とは性質が異なりますので、独特の塩素臭や殺菌力はありません。
遊離残留塩素は強い刺激性を持ち、細菌を殺す力を持ちます、それでいて人体への毒性は低いので近代水道事業において疫病や流行病を減少させた大きな功績があります。
しかし味、臭気の問題だけではなく、アトピー性皮膚炎の一因となったり、水中の有機物と結合して有害なトリハトメタンを生成する等、効能だけではなく負の一面も顕在化してきました。
活性炭の塩素処理の仕組みは遊離残留塩素に炭素を触れさせる事により刺激性の無い塩素イオンに変えます。塩素イオンは食塩を構成するナトリウムイオンのカウンターイオンですから人体には無害です。
活性炭は広大な表面積を持ちますが、それも有限、表面に異物が付着すれば遊離残留塩素は炭素に触れることなくそのまま浄水へ流れてしまいます。このように今まで吸着していたものが、あたかも徐々に吸着出来なくなるようにブレイクして行くので、浄水器のフィルターとしては「活性炭が塩素を吸着」と説明した方が消費者の方に判りやすいと言うことみたいです。
遊離残留塩素の処理は活性炭との反応で実際には除去していないのですが、一方でトリハロメタンや活性炭に種類によっては溶解性鉛等の除去については吸着です。これはよく聞くように活性炭に小さな微細孔の中に捕まえて吸着します。
炭素と異物が非常に接近すると分子間力と言う引力が働き、異物を捕まえて離さない、これが吸着除去です。ところがこの吸着は遊離残留塩素の炭素に触れるだけでよい反応に比べて処理できる量が非常に少なくなります。
通常、トリハロメタン等の処理量は遊離残留塩素の1/4程度しかありません、ですがフィルター寿命は遊離残留塩素の処理量で○○○○㍑と表示されている場合もあります。トリハロメタンが心配で浄水器を使用しているなら、トリハロメタンの処理水量で浄水器のフィルター交換時期を決めなければなりません。
活性炭は何でも取れる!?、こんな表現があります。
半分嘘で半分正しいような表現です。活性炭主体の米国製浄水器によく見られる表現です。「砒素も除去!」て宣伝しますが砒素が検出された井戸水で使いたいと問い合わせると、井戸水には対応出来ません、と答えます。
活性炭はその小さな穴の中へ不純物を吸着します。様々な物質を吸着しますから、除去出来るのは嘘ではない、が、しかし、100ある内の5しか除去出来なくても、除去できたっていってしまって嘘じゃないですよ~と言うことでしょう。
飲用可能な状態まで除去出来ないのであれば、浄水器を使う目的から考えて除去項目に表示するのは誠実な表示とは言えないでしょう。
活性炭は様々な物質を吸着し便利な素材ですが、特別なチューニングにより有害物質除去能力を持たせる事も出来る様ですが、深刻な汚染井戸水を任せられる程の性能は持ちません。但し、遊離残留塩素除去については非常にロングライフに改質能力を持ちます、それは除去ではなく炭素との反応だからです。
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