浄水器の基礎知識

浄水器の仕事は水中の不純物を除去して安全で美味しい水を造る事です。

インターネットで浄水器を調べると、浄水器には様々な種類があるように見えます。そのどれもが「浄水性能No.1!」の様な宣伝文句を並べています、何についてNo.1の性能なのでしょうか?それは求めている性能なのか?と迷ってしまいます。

弊社では浄水器の中でも逆浸透膜式の浄水器のみ販売しています。一般的な浄水器から比較すると構造も複雑で手間の掛かる逆浸透膜浄水器のみを12年間販売し続けている理由があります。この12年の間に逆浸透膜式以上に弊社が魅力を感じる浄水器は世に出ていません。

美味しい水だけを求めるのなら逆浸透膜式の浄水器では無くても良い場合もあるでしょう、でもお客様が「安全」で美味しい水を求められるなら、私どもは自信を持って逆浸透膜浄水器をご提案いたします。

ですが、逆浸透膜式の浄水器のみが全てに対応する唯一無二の処方箋とも考えていません、純水を造る様なハイレベルの浄水能力よりも大量の浄水を必要とする場面や、有害物質の除去よりも味、臭気の改善を主眼としてローコストに浄水処理を行いたい場合、遊離残留塩素の刺激から肌を守りたいだけでしたら、活性炭で遊離残留塩素の処理をするだけでも良い訳です、状況に合った浄水方式の選択があると考えています。

浄水器に使用されるフィルター(櫨材)によって出来る事、出来ない事はハッキリしています。

一方で活水器、整水器メーカーなどが主張する水そのものを変化させる、自然の力で水を蘇らせるなど偽科学的な商品について、ここでは取り上げません。10年前に比べてこれらの商品が下火になりつつあるのは、科学の進歩により淘汰される呪いや迷信の類と同じ道筋だと考えています。

浄水器の性能はフィルター(櫨材)の種類で決まります。

浄水器の櫨材とはフィルターの事です、細かな穴の開いたフィルターに水を通過させる事によって水中の不純物を除去します、分かり易いスポンジ状のものや、細かな孔の開いたフィルターは濾過膜とも呼ばれます。もう一つは活性炭、これは吸着材の一種で通常はフィルターと活性炭を組み合わせて浄水器のフィルターとして使用します。

孔径の大きなフィルターは水をたくさん通す事が出来ますが、小さな不純物は通過して浄水に残ってしまいます、逆に孔径を小さくすれば浄水を作るスピードは遅くなりますが、より小さな不純物まで除去する事が出来ます。

浄水器で使われるフィルターの種類
繊維フィルター(孔径~1ミクロン)
精密濾過膜(孔径 0.01ミクロン)
限外濾過膜(孔径 0.01~0.001ミクロン)
逆浸透膜(孔径 0.0001ミクロン相当)
セラミック(孔径 ~0.01ミクロン)
活性炭

有害物質は水に溶けて小さくなる

浄水器で水のなから除去したい有害物質は何か?その有害物質の大きさはどの位なのか?放射性物質を例にとって考えてみましょう。

2011年、震災津波を起因として破壊された原発から大気中へ大量の放射性物質が放出されました、大気中へ放出された放射性物質の塵は浄水器視点のミクロの目で見れば、まだ大きな塊状の放射性物質と言えます。これが水道水の原料である河川へ落ち、上流から下流へ流れて行きます、放射性物質が塵の様に大きな状態のままでしたら浄水場の擬集沈殿などで取り除かれ水道水まで放射性物質が残留する事はありませんし、塵の様な大きなサイズなら一般的な浄水器でも取り除く事が出来るでしょう。

しかし東京都の水道水で200ベクレルを超える放射性物質が検出されました。

これは塵状の放射性物質が水に溶けて大きなサイズの塵から極小サイズのイオンへと変化したからです。塩粒は指でも摘めますが水に溶けた塩を指で摘んで回収する事は出来ません、この様に物質が水に溶けるとその大きさは極端に小さくなってしまうのです。水に溶解してイオンとなった放射性物質は原子単体と同様の極小物質ですから、吸着剤を使用したとしても浄水場で完全に取り除く事は出来ません。

一般的な日本製浄水器に使用されている精密濾過膜の孔径は0.01ミクロン、0.0001ミクロン単位のイオンとなった放射性物質は100%通過してしまいます。

放射性物質を除去するには溶けた塩を除去出来る浄水器が必要

水に溶解した放射性物質を浄水器で除去するには、少なくとも水に溶けた塩を除去する能力の有る浄水器で有る必要があります。

海水を淡水化する為に開発された逆浸透膜浄水器は水に溶けてイオンとなった不純物も95%位の高率で分離除去する事が出来ます。さらに逆浸透膜浄水器は分離除去した放射性物質を浄水器の外へ廃棄水として連続的に排水しますので、浄水器のフィルターヘ放射性物質を溜め込む事がありません。これは不純物を溜め込む一般的な浄水器と異なる大きな利点です。

逆浸透膜式以外でもイオン化した放射性物質を除去する方法があります、蒸留式、イオン交換樹脂による吸着となりますが、それぞれ短所を抱えています。

蒸留式浄水器の除去率は高いのですが、熱で沸騰させる為、エネルギーコストが高い事、造水速度が非常に遅い事が難点です。イオン交換樹脂はビーズ状の樹脂表面へ放射性物質を吸着する事になりますが、吸着量が少ない為、フィルター寿命が非常に短くコスト高となります、また放射性物質を吸着すればフィルターに放射性物質が蓄積される事になります。

「水道水専用」と表示された、安全を守れない浄水器

「水道水専用」と表示された浄水器には水に溶けてイオン化した有害物質を除去する力はありません。「水道水専用」とは「水道水は安全の保証された水だから浄水器の浄水も当然安全です。」という意味と解します。確かな除去性能が有るならば、水道水と井戸水を区別する必要もありません、放射性物質で水道水の安全が崩れると「水道水専用」と表示された浄水器は「安全な水を造る」という点で存在意義を失ったのです。

放射性物質以前の問題として弊社のユーザー様の30%位は井戸水で浄水器を使っています、それもヒ素や硝酸などが基準値を超えて検出された飲用不可の井戸水を逆浸透膜浄水器で浄水して生活しているのです。千葉市ではヒ素、硝酸、六価クロムなどに汚染された井戸水で生活する市民に対して浄水器購入補助金制度が有ります、補助対象となるのは逆浸透膜式の浄水器のみで、他方式で除去性能を喧伝する浄水器は一つもありません。

ギリギリ嘘じゃない!?浄水器の宣伝文句

弊社のお客様からお聞きした話です、「ヒ素が除去出来る」出来るとHPに記載された外国製浄水器の販売者に、井戸水でヒ素が検出されたので購入したいと電話をすると「ヒ素は除去できますが、水道水専用の浄水器ですから井戸水には使用できません。」と断られたそうです。

ヒ素を除去できるのが確かなら、ヒ素が検出された井戸水でも、水道水以上に他の不純物や濁りが無く綺麗な水も有りますから、井戸水だから浄水器のフィルターが目詰まりしやすい等の理由で画一的に断る必要は無いはずです。

浄水器のフィルターに使われる活性炭は無数の細かな孔が開いた構造で、その孔の中に様々な物質を吸着します。例えばヒ素が100有るとして、その内5しか吸着出来なくても、確かに吸着除去しています。つまり、原水の数値より少しでも減っていれば「除去できました」と表示しても嘘ではないですね。

浄水器の除去性能を表示するには原水に何ppmのヒ素が存在して、浄水器通過後の浄水に何ppmのヒ素が残留したかで除去性能が求まるのです、さらに、その除去性能試験は浄水器への給水から浄水採取まで第三者機関の監視下で行われなければなりません。

もう一つ、活性炭へイオン交換樹脂を混ぜれば初期性能を高める事が出来ますが、家庭用浄水器の小さなフィルター容量では数十リットルの使用で急速に除去性能は低下するでしょう。

この様な内容の浄水器をヒ素が検出された井戸水に使われたら大問題となります、これが何でも除去できる様な高性能浄水器と宣伝しながら危険な井戸水から逃げる理由です。

逆浸透膜浄水器が優れているならもっと普及しているはずでは?

なぜ逆浸透膜式の浄水器が普及しないのでしょう? ここまでお読み頂いて一つの疑念を持たれた方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?それは「逆浸透膜の浄水器が明らかに高性能なら 他方式の浄水器を販売していた業者も逆浸透膜浄水器を取り扱えば良いではないか?」と言う疑問です。私どもそう考えていました、ですので販売代理店を募集し、卸し販売にも力を入れてきましたが、当初考えていた程、拡大していません。弊社が分析した主な理由は

・メンテナンス/故障時の対応が面倒臭い
普通の浄水器と異なり、4?5本の多段式フィルター構成、電動ポンプやその制御スイッチ等からなる逆浸透膜式の浄水器は浄水装置に近くなります。フィルターとケースだけの浄水器を販売をしてる方から見れば非常に面倒な商品でしょう。

また逆浸透膜浄水器の販売経験がありながら、逆浸透膜に対してネガティブキャンペーンをする浄水器販売業者もいます。恐らくは充分な知識が無く逆浸透膜式の浄水器を扱ってみたものも、トラブル時対応出来なくて痛い目にあったのでしょう。

・利益率が悪い
(浄水装置の体裁ですからフィルターとケースだけの浄水器と比べれば当然製造コストは高くなります。

弊社の逆浸透膜式と同様の価格設定をしているとすれば当然利幅は大きく減ってしまうでしょう。これが今まで逆浸透膜浄水器を25?30万以上の高額な浄水器としてきた理由の一つです。)

結果、現在、弊社逆浸透膜浄水器を取り扱っている代理店は、元々浄水器だけを販売していた方は非常に少なく、電気店、建築工事業、設備工事業、お茶の販売など、どちらかと言うと堅いご商売の方が多くなっております。

弊社の逆浸透膜浄水器への取り組みは

弊社で働くスタッフは前職が銀行員、一級建築士、プログラマー、配管工事業など普通の仕事を経験してきた者達ばかりです。私どもから見れば逆浸透膜浄水器のメンテナンス/修理等のアフターサービスが面倒な仕事と感じる事はありませんし、利益率についても現在の価格設定で通常の仕事に比べて不当に少ないとは思いません。どんな仕事でも、その仕事ごと大変さがあるのだと思いますし、それがあるからお客様から対価を頂けるのでしょう。

もし本当に濾材+活性炭(+イオン交換樹脂)の簡単な浄水器で安全かつ美味しい水が得られるなら、逆浸透膜浄水器は存在意義を失い、日本より遙かに合理的な考え方をする米国でこの浄水器が普及している事もないでしょう、しかし現実にはそんな都合の良い話(浄水器)は存在しません。逆浸透膜浄水器が4?5段階ものフィルターを持ち、電動ポンプや不純物を廃棄水として排水するのは様々な条件下で安全で美味しい「純水」を造る性能を長期間維持する為に必要な構成なのです。

私どもは浄水器の水に依って病気を治したり 、何か特別な水の力で健康になると言うような考えは持っていません、但し、水に含まれるものが体に悪影響を与えているとしたら、逆浸透膜浄水器はその原因物質を95%以上取り除く事が出来る浄水器です。

私どもは一つ一つ丁寧にお客様へ浄水器をお届けしたいのです

私どもは逆浸透膜浄水器の高い商品能力に惹かれ、販売し始めて12年目となります、今では浄水器の性能について揺るぎない確信を得ています。逆浸透膜の浄水器と出会わなければ、私どもは浄水器関連の仕事に携わることは無かったでしょう。現在でも難しいと感じるのは、この荒れたマーケットである浄水器業界で逆浸透膜浄水器をどうすればご理解頂けるのか?とっ、この一点につきます。誠実な説明は、往々にして他の浄水器の誇大な宣伝文句に負けてしまい、人を惑わす力に勝てない場合が多くあります、それでも私どもは今までのスタンスを崩すことなく、一人一人のお客様へ、一つ一つ丁寧にご説明をして、お客様の疑問や不安が解消された時、一つずつアクアカルテックの逆浸透膜浄水器をお届けしてゆきます。

長々とした文章を最後までご覧頂きまして有り難うございます。私どもの浄水器への取り組みが少しでもお客様のお役に立てれば幸甚に存じます。

アクアカルテック株式会社 代表取締役 中坪 治

浄水器/アクアカルテック