逆浸透膜浄水器の分離メカニズム
「つまり水分子と同じ大きさの孔だから分離除去出来る」というのは正しくありません。一方で逆浸透膜浄水器が水分子より小さな不純物イオンを95%以上除去出来るのも、様々な機関で検証された事実です。
逆浸透膜浄水器のフィルター=メンブレンで水分子と不純物イオンがどの様に動いているのか、これは余りに極小の世界過ぎて、電子顕微鏡で観測しても分子が熱振動をしている為、その動きを追うことが出来ません。
ここでは諸説あるメンブレンの分離メカニズムを段階的にご説明出来ればと考えております。
1.水に不純物が溶けるという事
塩の塊を思い浮かべて下さい、塩の塊なら手で摘む事も出来ます。粉状の塩でもまだ指先で摘めそうです。でも塩を水に溶かしてしまったら、もう指先で水の中から回収する事は出来ません。同じ塩という物質でも大きさが異なる事がご理解頂けると思います。
この様に多くの物質は水に溶けて、自然界で一番細かく小さいイオンとなります。イオンは+または-の電荷を持ちます。
水分子は水素原子2個と酸素原子1個の化合物ですが、電気的な分布が偏り、極性をもっています。具体的には水素原子部分が+に、酸素原子部分が-に偏っています。
この+と-が互いに引き寄せる力を持つため、水分子同士は磁石の様に引き合い、くっついて存在しています。水滴が球になったり、表面張力を支えている力です、水素結合と言います。
この力は不純物イオンにも働き、+電荷イオンには水分子の酸素原子部分が、-電荷イオンには水分子の水素原子部分が取り付きます。
大きな塊の不純物が水に落ちると水分子がとりつき、それを細かくして水に溶かして行きます。水に不純物が溶解するとは、イオンまで細かくなった不純物に水分子が取り付いている状態です、これを水和と言います。
溶けきれなかった重い不純物は水の底に沈殿します。
水に溶解した状態とは不純物がイオンまで細かくなって水分子が水和して、水中に安定して留まっている状態となります。
2.不純物イオン+水分子で分離する
メンブレンに水分子と同じ位の孔が空いているとしたら、水分子に水和された不純物イオンはメンブレンを通過出来なくなります。
これは1価のイオン(水分子が1個水和)より2価のイオン(水分子が2個水和)の方が一般的に少し高い除去率になる事からも裏付けられます。
3.メンブレンの孔の大きさは、実は水分子よりずっと大きい
長いトンネル孔が水分子と同じ大きさの径だとしたら、摩擦抵抗が大きすぎて水分子はメンブレンを通過する事が出来ないでしょう。
メンブレンのトンネル孔は水分子よりかなり大きな直径を持つと推測されます。
メンブレン断面の想像図です、誰も見た人がいませんから。
この図ではメンブレンの下側を原水(=水道水/地下水)が通っています、原水側の水圧を高めて本来の浸透圧現象とは逆方向に水分子を押し出すのが逆浸透膜浄水器の原理です。
水分子だけが(実際には95?98%位)メンブレンを通過し、不純物イオンが残った原水は排水として浄水器の外へ連続的に排水されて行きます。
弊社の設定では浄水1:排水2?2.5位の比率にしています、排水量を減らして浄水の回収率を高める事は、すなわちメンブレンに掛かる圧力を高める事ですから、メンブレンの目詰まりのリスクを高め、メンブレンの寿命を縮めます。
トンネル孔の壁に沿って水分子が並んでいます、今度はトンネル孔を輪切りにして見ましょう。
メンブレンの孔の内壁にそって水分子が貼り付いています。水分子とメンブレンを構成している物質との間に働く分子間力という引力で壁側に吸い寄せられています。
トンネル内壁に水分子がビッシリと貼り付く事によってトンネル径を実際より狭くしています。実際にはもっと幾重にも水分子が貼り付き、より大きな孔径をより小さくしているのかもしれません。
水分子はメンブレンの孔径を狭め、一方で不純物イオンに水和する事で不純物イオンの大きさを実際より大きくしています。水分子の性質によって相対的に不純物がメンブレンを通りにくくなる訳です。
また水分子がトンネル孔の内壁に吸い寄せられる事で中心部の水分子の存在比率が低くなります。水に溶解した不純物イオンは水分子と水和して存在していますから、水分子の少ない場所には不純物イオンも存在しにくくなります。
この様に逆浸透膜浄水器のメンブレンでは様々な要因が複雑に影響しあって分離除去が行われているのは間違いないようです。
以上が逆浸透膜式の浄水器による不純物イオンの除去メカニズムのご説明です、水に溶けて電荷を持つ物質と水分子の動き、これは放射性物質であっても同様に変わることはありません。